Italia Trip

Mr.Kのイタリア旅日記 vol.4

2021.07.14
 

2019年7月14日
カッリャリ2日目

この日は朝から車でドライブ。カッリャリの旧市街を走ったり、港を見学したり、そこら中を見せてもらった。やはりサルデーニャは違う。何十年も見てきたイタリアの風景ではない。海や山は変わらないが、街の造りが全然違う。

フランスだったり、スペインだったり、この島は全てのヨーロッパの国々が戦略的にどうしても欲しかった為に、歴史的に色々な国が侵入してきた。そしてその時、その時の建物を建てた。言語も独特で、現在はもちろんイタリア語だが、かなり強い方言で訛りがある。他州の人に比べるとゆっくり話すので、聞いていて心地良いアクセントだ。何よりおっとりしているように感じた。

午後からようやくPALA社が持つ畑を廻った。
PALA社は1950年創立、現在のオーナーマリオ氏で4代目。
畑の所有面積は88ヘクタール、ワインの総生産量45万本。まず88ヘクタールの畑から45万本の生産量は驚異的に少ない。一般的に良質と言われるワインでも1ヘクタール1万本程はできる。極端に生産量を抑えている。1本のブドウの木から獲る量が少ないのだ。

PALA社の畑は海岸に近い乾いた砂地であったり、標高250m程の丘にあったり、トータル8区画の違う土壌から7〜8種類のブドウを育てている。中でも、標高200mの丘陵地にある畑(S’ARAI)はとてもユニークで、畑自体がまっ白な石灰土壌で非常に乾燥している。まさに眩しい白さであった。ここでは、サルデーニャの伝統的ブドウ、カンノナウ、カリニャーノ、ボヴァーレを栽培している。出来上がったワインは、ミネラル、カルシウムが豊富に感じられ、クリアに向こう側が見える。
ワイン名は畑の名前をそのまま付けたS’ARAI。PALA社の赤ワインの中のトップワインだ。淡い色調ではあるが、やや強いめのタンニンと長期熟成から来るまろやかさが素晴らしい。私自身は少し温度を下げて魚貝の料理に合わせる事をおすすめしたい。

次に行った海岸に近い畑は今まで見た事がないような砂土壌。海岸、ビーチからそのまま続く砂の畑だった。まさにビーチの延長。これでは水がいくらあっても足りないのではないか?と思ってしまう。
当然枯れてしまう確率も高く、樹は常に水を求めている。その分、根付いた樹の根は深く、清潔で乾いたトーンの味わいが感じられる。ブドウはボヴァーレが中心。この砂土壌では、植樹が難しくなかなか若木が根付かない。その為、ユニークな栽培方法をとっている。
しっかりと根付いた親木の枝を土の中に引き込んで、土の中に埋めてしまう。そうすると埋められた枝から根が出て、そこから新しい樹として育っていく。
この様な増やし方は初めて見た。プロヴィナージュ方式というのだそうだ。植樹をしても、しても根付かない土壌ならではである。

ブドウの樹というのは、とてつもなく生命力があり、子孫を残そうとする力はたいへんなものである。この様な乾ききった様な砂の土壌でも、水を与える事がない。最近はイタリア中(世界中)で灌水用のチューブを通して、ブドウ畑を仕立てるケースが良くあるが、このエリア、この畑にはそれがない。雨水だけを待っている。
どれくらい土中深く根を伸ばせば地中の水分に届くのか?どのくらいの周期で雨が降るのか、土の表面だけを見ている限り相当深くまで水分は無さそうに思う。
この様なきびしい土地ではあるが、サルデーニャのワインの人気が上がっているのか、囲りにはきれいに整地されている、おそらくブドウ畑用に用意されている区画だと思われるが、何も植えられていない。

輸出部長のファビオ氏は言う。これだけ囲りに遊んでいる畑があり、色々な人達が所有しているのだけれども、だれもリースとして貸してくれない。
2〜3年もこの状態だそうだ。それぞれの土地の所有者は、まだまだ土地の価格が上昇すると考えて相場が上がるのをずっと待っているのだ。
近い将来、サルデーニャワインの人気が益々上がる気がした。
そして2年後の2021年、私の予感は的中した。