Italia Trip

Mr.Kのイタリア旅日記 vol.15

2022.05.09
 

みなさん、ゴールデンウィークはいかがでしたか?
3年ぶりに海外旅行も行けたようだし、全国各地の観光地も大賑わいでいい感じ。
このまま明るくなってくれれば。私の場合はゴールデンウイーク前に恒例のイベントが待っている。
VINITALYだ。毎年4月になるとVINITALYの文字があふれ出す。正確には2月ごろから。
イタリア中の色々なワイナリーから案内が入る。オフィスのコンピューターにも携帯電話にも。「来て下さい。来て下さい。ウチのワイナリーはすごいですよ。ウチのワイナリーはこんな賞を取りましたよ。」 とにかくすごい数のワイナリーからのお誘いが来る。まぁ彼らにしてみれば年に1度のワインのお祭り。イタリアワインにおける世界最大の見本市なのだから当然のことだ。
出展費用も大規模なブースであればおそらく数千万円はかけているだろう。
もちろん小さなブースであれば180cm程のテーブルひとつで出展しているワイナリーもたくさんあるが、大手のワイナリーともなればそれこそ、そこらの飲食店並の装飾を施し、見事!!としかいいようがない。これを4〜5日開催した後すぐに撤去してしまうのだから、ワインビジネスがいかに成長した市場で大きなお金が動く世界なのだと感心させられる。

もう少し説明すると、VINITALYとは毎年4月の初旬、イタリア北部の街ヴェローナ/VERONAで開催されるワイン、グラッパ、リキュール、ビール等々、アルコール類の大見本市。ヴェローナが誇る見本市会場VERONA-FIERAで開催される。2022年でいえば4月10日〜4月13日の4日間。今年で54回目の開催であった。出展者数4,600社、来場者数は125,000人(2019実績)。とてもじゃないが、4日間で見て廻るには無理がある。事前に毎日のスケジュールを決めておいて、バタバタの大忙しで広い会場を走り回る。私達フードライナーの場合は、今さら新しいワイナリーの新しいワインを必死で探すという目的ではなく、すでにお付き合いをしているワイナリーのニューヴィンテージを試飲したり、少なくとも年に1度顔を見て直接話をする、といった意味で現地に行く事が多い。それでも最低30件くらいのブースを回るのだから大変な時間と労力を必要とする。朝9:30頃から夕方17:00頃までずっと試飲をしている。試飲というより飲んでいる。アイテム的には1日100〜150程は試飲をする事になる。

世界的にまだまだコロナ禍の状況は変わらないが、3年ぶりに開催された今年のVINITALY。残念ながら伺うことはできなかったが、私たちのお得意先が写真を届けてくれた。

まだまだ来場者は少ないようだが、まずは開催されたことに感謝しよう。

それでは、その会場の話をしよう。VERONA-FIERAという会場の広さが半端ではない。 サッカーコートほどの広さのパビリオンが各州ごとに①〜⑫ある。それプラス、カンパーニャ州だけの特設パビリオンやオリーブオイルだけの特設パビリオン、ワイン関連のグッズだけを展示しているパビリオンなどとにかく広い。スケジュールの取り方を間違ったりすると移動だけでとんでもない事になる。銀座8丁目から1丁目までを2〜3往復するような事になってしまう。
それに加えて、こちらが時間通りに目的のブースに着いても、先客のミーティングが長引いていて「ごめん30分後」とかいわれると非常に流れが狂ってしまう。こちらとしては、1件でも多く廻りたいからかなりタイトに予定を入れている。もちろん前もって了解ももらっている。だけどほとんどうまく繋がらない。予定はあくまでも目安でしかない。相手はイタリア人なのだから…と思いつつも全てが狂う。
昔はそんな事にもイライラしていたけれど、最近はそんな事どうでも良くなっても来ているのも事実で、むしろいつでも空いている様なワインメーカーと取り引きしていないんだ、と楽しんでいる。

会場が広い分記録写真も半端なく多いが、その中から弊社スタッフが撮影した2017年と2018年の写真とともに文章を進めよう。

私達の取り引きワイナリーを改めて見てみると、やはりピエモンテ、ヴェネト、トスカーナが多い。なので、今日はピエモンテのパビリオンを中心に廻ろう、今日はヴェネトとフリウリを廻ろう、とか考えてタイムスケジュールを入れる。この3つの州のパビリオンは特に人が多い。それもそのはずで、このあたりのパビリオンにはイタリアを代表する様なワイナリーが、ここぞとばかりに出展している。有名ワイナリーのオールスターのようなものだ。
その気になればイタリアを代表する全てのワインが試飲できてしまう。ただそれらの有名ワイナリーはほとんどがすでに日本に輸入されているので、好きなように「こんにちは。試飲をさせてくださーい。」とは言いづらい状況ではあるが、輸入・仕事という部分を除けば、試飲してあいさつぐらいはできる。あくまで勉強のために。もっと上のレベルにある(ワインの良し悪しとは別に人気として)ワイナリーなどは、完全予約でブースに入ることもできないことも多い。
ピエモンテ州のワイナリーの場合は、フランスでいうブルゴーニュ的商売をしているワイナリーが多い。家族経営的というか、小さい畑区画で運営しているのに対してトスカーナは比較的、貴族、商社的で区画生産量が大きい生産者が多い。ボルドーのワイナリー的要素を感じる。

フードライナーがお付き合いをしているワイナリーにも家族経営的ワイナリーと、商社的ワイナリーの両方がある。家族経営的ワイナリーは文字通り家族経営なので、色んな問題に直面してもお互いに話せば分かる。話しても分からないのがもう一方の商社的ワイナリーである。過去何年もの資料が用意されていて、去年の数字に対して多角的に理論立てて、白か黒かをはっきりさせてくる。いい加減な返事は許してもらえない。通用しない。
とはいえ、2020年、2021年、そして今年2022年もVINITALYには行かなかった。出展した取引先からの連絡ではまだまだ来場者は少なかったようだ。特にイタリア国外からは。

私達のVINITALYは来年から復活しようと考えている。今年については、もう少しコロナの様子を見てから、秋の収穫期にそれぞれのワイナリーを廻れる範囲で廻ってみようと考えている。

さてVINITALYのおもしろさについて書いてみよう。
前にも書いたがVINITALYは今年で54回目になるが、なぜVINITALYがVERONAで開催されるのかということ。VERONAの街はイタリアにおいてもそれほど大きな街でもなく、人口ベースでいうとイタリア国内で12位(約26万人)。1位のローマと比べると、約10分の1ほどの地方都市である。ロミオとジュリエットで有名な観光地ではあるが、ミラノ・ローマ・ナポリほどではないので、基本的にホテルもたくさんあるわけでもない。そしてVINITALYが開催されるVERONA FIERAという会場は、街中から少し離れた住宅地の中にあるので、会場の周りにはホテルが少ない。当然ながら街中のホテルは全て満室となり、開催期間中は街中がパニック状態になってしまう。私達もそうだが、誰もがVINITALY終了後に来年の予約をして帰るので、レストランの予約もかなり前から入れておかなければ有名店などで一切食べる事はできない。

私達はというと、2月頃からお付き合いをしているワイナリーが、「一緒にディナーを」と誘ってくれるので、食事に困ることはないが、逆に開催中4回しか食べるチャンスがない夕食に対して、5社も6社も、時には10社からも誘われるので、どうしてよいのか毎年悩まされている。決まっているのは最終日にPIEROPAN社との夕食で15年近く恒例行事になっている。おかげでVERONA・SOAVEあたりの有名レストランはほとんど連れて行ってもらっている。ピエロパンは文字通りSOAVEの街のド真ん中にワイナリーがあるので(今はほんの少し北側へ移設)、VERONAのフェアが終わってほんの20分ほどで行けるため、毎年同行する弊社スタッフの勉強の場にもなっている。現在は新しいカンティーナ(醸造所)になっているが、昨年まではSOAVEの街中の小さなセラーだったので、すごく分かりやすくワインの醸造過程を知ることができたからだ。なんといってもPIEROPAN社とは25年以上も一緒にやってきているので、本当の意味で親戚のような関係性になっている。オーナー夫人のTERESITA夫人と再会するのもこのVINITALYの楽しみのひとつになっている。

それではなぜこのVINITALYがVERONAという、それほど大きくもない街で開催されるのだろうか。私自身、これという正解を知っている訳ではないが、以前ある人にこんな話を聞いた事がある。VINITALYは1967年が初回開催で、その後毎年開催されている。
VERONAはVENETO州を代表する街で(もちろんVENEZIAもあるが)街中には有名なコロッセオもあり、有名な映画「ロミオとジュリエット」のワンシーンのジュリエットの屋敷のベランダが今も残っている。ビアッツァといわれる広場がいくつもあり、その広場を囲むようにレストランやCAFÉのテーブルが広がり、夕暮れ時になればどこからともなく人々が集まり、各テーブル毎にオレンジに輝く「スピリッツ」を飲み始める。食前酒のスピリッツから軽い目のワインに変わり、アペリティーボからゆっくりと食事に入っていく。どうしようもなく格好いい。どうしてそんなに格好いいの?と思うほど格好いいのだ。そんな街であるのと同時にVERONA(VENETO)は農業が色濃く根付いている街でもある。フルーツの一大産地である。少し車を走らせれば、見渡す限り畑に覆いつくされる。イチゴ・アプリコット・ブドウ・メロン・スイカ・さくらんぼ 等々。中でも多くの面積を占めているのが、ワイン用のブドウ畑である。

街のすぐ近くにもSOAVE・BARDOLINO・VALPOLICELLA・CUSTOZAなど有名なワイン産地がひしめいている。だからこそVERONAで開催されるワインの一大イベントVINITALYがしっくりとくる。街中がワインの空気・気質にあふれている。だからVERONAなんだ、と聞いた事がある。

確かにVERONA FIEREに到着する度に毎年、同じ匂い・同じ雰囲気がする。何十年も変わることなくあのザワザワ感がある。まさに歴史なのだ。
別にVERONA FIEREのイベントホールはVINITALYのワインイベントだけではなく、一年中色々なテーマの見本市をしている。植木・皮製品・機械・モーターバイク・運輸関連・健康食品など。しかしやはり4月のワイン関連「VINITALY」が一番大きい。人口26万人の街に15万人近くの人が訪れ、1週間にわたってみんなで大騒ぎするのだから、街中がえらいことになるのだ。VERONAの老舗ワインバーなどは、1週間で1万本のワインが開く。それもみんなここぞとばかりにとんでもなく高価なワインを飲んでいる。なんとなく見ていると、「これ飲んでる自慢」のようにも見える。世界中のワインビジネス関係者、ワインラヴァー(wine lover)生産者が、本当に楽しそうに飲んでいる。

VINITALY開催中、夜10時頃のVERONAの街中は異常なほど盛り上がっている。男性も女性も若い人も年配者も最高にオシャレをして、最高に格好つけて。

今回のテーマはVINITALYについて書こうと思い書きはじめたけど、VINITALYの中身ではなく、ついついVINITALYの街の紹介になってしまった。ただ、それくらい中身が濃い「街を上げてのワインのお祭り」であるということかもしれない。

来年はぜひ行きたい。そして友のような取引先の仲間たちと再会したい。そのためにも世の中の平穏を願うばかりだ。みなさんも機会があればぜひ行ってほしい。会場の熱気、雰囲気を肌で感じてほしい。もちろんいろんなワインを味わいながら・・・。