Italia Trip

Mr.Kのイタリア旅日記 vol.27

2024.04.03
 

ALTA LANGHA−アルタランガ

昨秋にピエモンテのワイナリーを訪問した旅日記を今回も続けることにする。 前回はブライダが新しくはじめたカジュアル・ホテルBRAIDA WINE RESORTについて紹介させてもらったが、今回は以前から気になっていたALTA LANGHA(アルタランガ)について書いてみよう。

さて、みなさんはALTA LANGHA DOCG.という名のワインをご存知だろうか。
2011年にDOCGに認定されピエモンテのスパークリングワインにおいては最高峰ともいえるワインで、製法上のルールが確立した事によってイタリア二大スパークリングワインが誕生した。アルタランガとフランチャコルタだ。フランチャコルタについてはすでに多くの人に知られている、と思われる。(世界的にはまだまだのようだが日本はフランチャコルタを理解している数少ない国のひとつである)

アルタランガの製法上のルールや始まりについては、輸入会社のHPなどを見ていただければわかるので今回は実際に現地で見て感じたことを書くことにする。
まずルールの中で私が一番気になっていたのは、標高250m以上の畑から収穫されたブドウしか使用してはいけないというポイントだ。
最近は地球温暖化による気温の上昇が問題視されており、多くのワイナリーがより高くより涼しいエリアを求めてブドウ畑を開拓している。
「標高250m以上の畑から・・・」と読んだり聞いたりすると、すごい事のように感じるが、標高250m以上の畑などはバローロやバルバレスコではごく当たり前の話だし、バローロにおいては標高400m、それ以上の畑も普通にある。
取引先のバローロ生産者が持つ標高300m以上の畑をたくさん見てきたから、何を今さら“標高250m以上”を自慢げに書いているのかが疑問だった。

フードライナーとして輸入販売しているアルタランガは今のところはCOCCHI(コッキ)社だけだ。
COCCHI社はピエモンテの州都トリノの近くで創業したヴェルモットリキュールが有名な蒸留所で、特に有名なのがBAROLO CHINATO(バローロ・キナート)。バローロをベースに数種類のハーブやスパイスを漬け込み、それに砂糖やアルコールを加えて作るリキュールだ。カテゴリーは酒精強化ワイン。
ソーダや辛口スパークリングワインで割って食前酒にしたり、そのままストレートでデザートに合わせたり飲み方は色々あるが、とても芳醇で味わい深いリッチな飲物に仕上がっている。

このヴェルモット、バローロ・キナートがフードライナーとCOCCHI社との関係の始まりだった。お得意先からの強い要望がきっかけだったが、COCCHI社にすればアルタランガを売り込みたかったから、機会がある毎にサンプルとして色々と送って来てくれていた。

我々もCOCCHI社がアルタランガやシャルマ方式で作るスプマンテも数多く作っているのは知っていたが、すでに多くのメーカーのスパークリングワインを扱っていたので、それほど興味を持っていなかったというのが正直なところだった。

しかし、最初はそれほど魅力を感じなかったのだが、ある日そのアルタランガを飲んだ時に今までに飲んだ事がない味わいを感じたのだった。味わいというよりは感触というか、舌触りというか、とても細かな泡質!すごく細かくて小さな泡が液体の中からにじみ出てくる、とにかく過去に味わった事がないリッチで大人っぽい感覚だった。それまでにもアルタランガのワインはイタリアや日本で何種類も飲んでいたが、COCCHI社のアルタランガからは全く違う印象を受けたのだった。

確かに瓶内二次発酵の期間はとても長いが(私が飲んだTOTOCORDE2017は6年間のシュールリーでしたが)それだけではないような仕上がりだった。
それからCOCCHI社のアルタランガがとても好きになり、現在はロゼも含めて4種類のアルタランガを取り扱っている。あらためてフランチャコルタとは違う魅力を覚えてしまった。

アルタランガとはランゲ(ランガ)地方の標高の高い所(250m以上)。直訳すれば“ランゲの上”または“ランゲの上方”という意味で、ランゲ地方と言えば、ご存知のバローロ地区・バルバレスコ地区・一部アスティにまたがる地区のこと。

COCCHI社との付き合いはまだ浅くワイナリーには訪問できていなかったが、昨秋の訪問時に半日かけて畑を見せてもらった。といっても畑は広範囲に点在しているので、畑から畑への移動に時間がかかりそうだったので、MANGO(マンゴ)、TREZZO TINELLA(トレッツォ・ティネラ)、NEVIGLIE(ネヴィリエ)あたりを重点的に廻った。

ブドウ畑を廻ってみて驚いたことは、標高がとても高くバルバレスコの丘などが遙か下に見えていたことだ。
私自身、今まで何度もピエモンテの色々な畑(バローロやバルバレスコ)を廻ったが、これほどの標高の高い尾根から尾根を移動した事はなかった。

TREZZO TINELLA地区としては、以前にブライダ社の畑に行った事もあり、かなり高いと思っていたが、それでも400mくらいで、今回のCOCCHI社の畑は500〜550mで一回りも高かった。
アルタランガDOCGの「最低250m以上」という決まり事は理解していたし、逆にそれがどうした?ぐらいに考えていたが、「最低250m以上」という意味が現地に行ってしっかり理解できた。

COCCHI社がアルタランガに使用しているブドウは、標高600m〜700mの畑のものもあるが、大部分は標高500mくらいのもので、今回はそのあたりの畑を見せてもらった。

ただ昨秋は、11月にも関わらず夏に咲く花が残っていたり、昼は長そでシャツ1枚で過ごせるほど暖かかった。これも異常な現象であると彼らは言っていた。

現在アルタランガDOCGのワインを作っているのはおよそ80社。
2010〜2011年にDOCG認定された当時は10社程度だったので、この12〜13年で生産者の数は8倍近くに膨れ上がった。その中でもアルタランガの可能性にいち早く気づいたCOCCHI社はアルタランガの第一人者であり、立上げグループ10社の中のリーダーと言える存在だ。これからもアルタランガをリードしていってほしい。できる限りの協力は惜しまないのでもっともっと広めていってほしい。さぁ、これからの期待度100%のアルタランガに乾杯しよう!!