Italia Trip

Mr.Kのイタリア旅日記 vol.18

2022.09.08
 

イタリア貿易振興会の招待旅行は連日がワイナリー訪問だった。
昼間はワイナリー訪問での試飲と訪問先でのランチパーティー。夜は4,5種類のワインが置かれたテーブルでオーナー同席のディナー。終わりは24時。たいへんだった思い出がある。
参加されていたワイナリーは当時のトップワイナリーばかりで今でもトップを走るワイナリー揃いだった。そして生産者協同組合で組織されているワイナリーの中で自分達のワインを自分達で販売することをめざすワイナリーばかりだった。そこで初めてCOLLEFRISIOと出会った。

約20社のワインを毎日飲み、7,8社は実際に訪問もしたが、COLLEFRISIOの評価が低かったのはワイナリーとして販売を始めてまだ2年目だったからだ。それまではCOLLEFRISIOも栽培農家としてブドウを作り協同組合に卸すことで生計を立てていたのだ。

錚々たるワイナリーの中で2年目のワイナリーのワインが私はなぜか一番美味しいと感じた。もちろんどれも美味しかったが、それなりに高価格で当時の日本のマーケットでのアブルッツォのワインの価格とは極端にかけ離れていた。それに対してCOLLEFRISIOは、当時の私達が輸入していたワイナリーより少し高いくらいで私の中の常識的な価格に近かった。とはいえやはり当時としては少し高かった。

結果的にその招待旅行で会ったワイナリーたちとは契約には至らず旅を終えた。ただCOLLEFRISIOというワイナリーだけはその後もずっと頭の中にあった。それは、二人の経営者のうちの一人であるAMEDEIの奥様の接客態度がとても印象的だったからだ。

古い教会で開催されていたTASTING PARTYで楽しそうにワインを注ぎ、一生懸命ワインを説明してCOLLEFRISIOの魅力をたっぷりと話してくれた。他のワイナリーがスーツ姿で生真面目にワインを説明している中で、自社のポロシャツとジーンズで笑顔いっぱいに説明する姿はとてもチャーミングでワインの仕事自体を楽しんでいるようでとても印象深かった。

それから数年、COLLEFRISIOとは会うことはなかったが、2009年に当時のワイナリーとの関係が終わり新しいアブルッツォのワイナリーを探す事になった。4月のVINITALYでは1日中アブルッツォパビリオンを廻り、たくさんのワインを試飲しミーティングもした。そうしながらパビリオンを歩いていたら、目の前にCOLLEFRISIOと書いたブースがあった。
まさかここでこのワイナリーと再会するとは思っていなかった。むしろ何年も経っていたので、現実的には忘れていた。

それが目の前でCOLLEFRISIOの文字を目にした時は、「あ~!?」だった。
逆に彼らはフードライナーを覚えてくれていて、たいへん歓迎してくれた。そこには当時のあのチャーミングな女性もいたし、社長のANTONIO、AMEDEIもいた。その日は朝から何件もアブルッツォの生産者と会ったが直感的に「今後はここと仕事をして行くな」と感じた。
さっそく試飲をした。全て飲んだ。「うまい」。なんというかフードライナー的美味しさだ。辛口の中にかすかに甘味があり透明感がある。重たくもなく軽すぎない。ちょうど良いバランスだった。さっそく価格の交渉になった。
当時よりかなり価格が上がっていたり、それまで取り扱ってきたアブルッツォのワインより高かったが、COLLEFRISIOが弊社と仕事をしたかったということもあり、一時間後には握手をする展開となった。

あれから12年。12回のVintageを飲み現在に至っている。
12年間彼らが一貫して言い続け、こだわっているのは
①完全発酵(残存糖度ゼロ)。持ち合わせた原料/ブドウのポテンシャルを余す事なくワインに変える。
②酸化防止剤の使用を極限まで下げる。これは最近、話題になっているポイントで、亜硫酸を抑えているワインというのは、味わいというよりも飲みこし(のど越し)に違いが出るということをこのワイナリーに教わった。

③畑の健康。これも今話題である持続可能な畑の環境を作るということ。
無農薬である必要もなければ、一切肥料を与えないといったことでもなく、ブドウの樹を1本1本健康に育てていくというポイントを重視している。
これも畑を歩いてブドウの樹に触れながら彼らに教わった。
現在、彼らが持っている畑のほとんどがBIO認証されている。
ブドウの樹の仕立ては基本、テンドーネ(藤棚式)を採用している。

2003~2004年まで、アブルッツォに行ったことがなかったので、この様な藤棚式のテンドーネ仕立てを見たことがなかった。とても感動した。
ちょうど白ブドウの収穫時期だったから、多くの人達がブドウを収穫していた。

テンドーネ仕立てというのは、良く考えられている。まず、かがまなくても良いので、腰への負担が少ない。ブドウの房はだいたい目の高さ辺りにぶら下がっていて、立ったままカットできる。バスケットがいっぱいになれば、その場に置いたまま次のバスケット、次のバスケットと移動して行けばいい。畑もある程度平坦なので、ブドウの入ったバスケットは背の低い回収用の車が使える。

そして何よりも良い所は、日陰の中で収穫が出来る事。残暑きびしいイタリアの9月初旬に日陰でかがまずにブドウが収穫できるのだから、とても恵まれている。風通しも良くとても涼しかった。基本的にはブドウの房も棚の下(天井の下)にあるから、強い直射日光から守られるし、湿度の高い時期は房を地面から遠ざけるのでカビや病気にかかりにくくなる。とても素晴らしい仕立てだ。30数年イタリアを旅していてもまだまだ知らないことがたくさんある。
早くコロナ禍がおさまり、“伝統日々新し”イタリアをあらためて体験したい。
そしてリアルなMr.Kの旅日記を届けたいと思う今日この頃である。